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2006/10/17//Tue.
吾亦紅 ~祥子様への手紙~1
祥子さまの"淑やかな彩”に触発されて、途切れ途切れになるとは思いますが、ちょっとまとまった量のものを書いてみようと思います。
祥子さまほど他動的にはなれませんかもしれませんけれど・・



前略。
祥子様お元気でしょうか。

先日私は田神からの誘いを断ったと申しましたが、事態は急展開、行くことになってしまいました。

田神だけに会いに行くわけではございません。
そのために秀之さんの耳に入る可能性が大きいので、田神に会いに行くのだとは明言しなかったのですが、出かけると秀之さんに話しました。

行くつもりは毛頭なくて田神の公演のことを話しておりましたから、秀之さんもそのへん思い当たるようでした。

けれどお互い大人ですから(彼が私よりずいぶん年下としても)、核心にはふれずに話は進み、結局「秋を楽しんでおいで」と送り出してくれることになりました。








田神がいくら天賦にめぐまれているといっても、衰えずにいられるわけもなく(私よりこれまたずいぶん年上ですし)、おそらく今回の公演が最後でしょう。

昨年彼の演奏を聴いたときに、私はそれをはっきり感じましたし、周りの評価もそうでしたから、私の中ではピリオドが打たれていたのです。

だから正直今回の公演の話を聞いたとき、驚きました。
田神自身も分かっていると思っていたからです。
己を知らぬ田神に失望いたしましたし、私は一度幕を下ろしたものに関心はございませんでした。

それが予期せずに私の時間がぽっかり空いて、
偶然田神と話をしましたところ、今回は表立ってはいないけれど代役なのだそうです。
やはり練習すらままならなくて、出演は本意のものではないらしいのです。
幕をひけない自分は潔くないと申します。

いつになく落ち込んだ様子を見て、
あなたから音楽をとったら、何が残るのかと
つい奮起させるようなことを言ってしまいました。
しかし、彼もまたこれが引き際だと思っているようです。

散る桜、沈み行く太陽、流れいく水、
日本人は滅びの中に美を求めます。
私は田神に見事に朽ちていってほしいと申しました。

今週、彼の最後の演奏を聞きにまいります。
全盛時には及びもつかないものでしょうが、この耳に残しておきたく存知ます。

田神に会わなければ、私の今はありませんでした。
祥子様には、お話申し上げたかしら?

                 以子




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