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2006/11/01//Wed.
朝の曳航
朝だ。
急ぐ私の足音だけしか聞こえない。
眠りについた褥のようなこの町は、夜にこそ息づく。

貴方は、あの隠れ家のような宿で、もう目覚めたのだろうか。
それとも昨日のめくるめくような夜を
まだ夢の中で曳航してくれているのかしら。

gion

女湯と男湯に別れて入って、庭園の見える庵で待ち合わせ。
貴方を待たせてはいけないと急ぐ気持ちを、
はしたないと思われたくない気持ちで押さえつけた。
なぜ貴方の前では子供のようになってしまうのだろう。

手をつないでお部屋に帰ると、すでに布団がのべられていた。
並んだ二つの布団はぴったりとひっついていたけれど、
わずかな力が加われば離れてしまう危うさが漂うようで、
「枕は・・ひとつで・・・いいのにね。」
不安を振り払おうと絞った声はかすれてしまった。

私の気持ちが伝わったのか、
いきなりいつもの穏やかな貴方からは想像もつかないような
強い力で抱きしめられて、
気がつくと私は小娘のように貴方の腕の中にいた。

「こんなに小さかったっけ?」
私を抱きしめて貴方は言ったわ。
「恥ずかしい・・・」

それから何を言ったのか、
何を言われたのか覚えていない。
ただ、熱くて溶けるような貴方との交わりを幾度も繰り返し、
私の中の貴方を感じて、
もっともっと感じたいと締め付けて、
歓喜の声をあげていたのだ。

そうして、
いつしか汗ばんだままの体で貴方は寝息を立て始め、
私は貴方の胸に頭をあずけたまま鼓動を聞いていた。
今この少年のような寝顔は私だけのもの・・・




好きになってはいけない。
私だけのものにはならない人なのだもの。
それどころか・・・
私とのことが白日にさらされれば、
この人は破滅してしまうかもしれない。

夜が明けきらないうちにここを出なくては。
誰にも見咎められてはいけない。

asa2

静まり返った家の格子戸を音をたてないように開く。
「おかえり・・」
奥で低く、けれど突きささるような声がする。
「ただいま。」
小さくつぶやくようにして、部屋へ戻る。

もう会わない。
私の本当の名前なんか貴方は知らなくていい。
あの夜さえ忘れなければ。

いいえ、忘れてもいい。
だって、私は貴方がこんなに好きなのだもの。
それだけを覚えてくれていたらいい。



kenさんの『夜の曳航』に触発されて(よく触発されるなぁ・・)、書いてみました。
古風な女性っていうのも、魅力的でしょう?
なりきれてないかな?(汗

コメント

いやあ…びっくりしました。
なるほど…さまざまな流れがあるのですね
移り行く時間の中で繰り広げられる
男と女の情景や記憶が感じる人によって
様々に変化してゆくのは
実に面白いですね。恐れ入りました。
Ken URL 11/02//Thu. [編集]
突然にすみません。
いろいろな生活があって、交わり離れていく
それを縁というのか、人生というのか。
それを面白いと思うことができるのも、
また人間だからゆえですねぇ。
ありがとうございました。

しかし・・もうちと玄人っぽい画像だとよかったな。
youya URL 11/02//Thu. [編集]








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