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2006/11/20//Mon.
【トリアングル】 *俵万智
特に積極的ではないけれど、抵抗もせず、Mにされるがままになっていた。彼に丹念に触れられると、どんなに眠くても、自然に体が受け入れ態勢を整えてしまう。
が、今夜は違った。どうしたのだろう。Mの指が、やさしいムカデみたいに這いまわる。それなのに私の体は、いっこうに変化の兆しを見せなかった。

かすかな焦りを感じて、自前でエロティックな想像をしてみたりもしたが、全然だめである。断水の日の蛇口のように、むなしく乾いたままだ。セックスにのぞもうという意志と関係なく、体がまるで無反応になっている。男の人がうまくいかないときというのは、もしかしてこんな感じなのだろうか。

「んー、おかしいな。やっぱり疲れてんのかな。ごめんね」
 言い終わる前に、Mは顔をずらして、私の下腹部にむかった。ムカデがなめくじに変わる。これをされると、全身の力が抜けて、足の付け根に次々と花が咲くような錯覚に見舞われる。そして、もっとも敏感な部分は、食虫植物になって、近づいてくるなめくじを待っている。

Mの舌をとらえて、ようやく蜜がこぼれはじめた。それでも、こんなことまでしてもらっているわりには、という感じである。
「あ・り・が・と」
それは、「もういいよ」の意味だ。Mが顔をあげ、ほんとうに?という顔をする。
「うん、気持ちよかった」

今日はまだ、痙攣するところまではいっていない。が、このまま続けてもらっても、そうなる自信がなかった。
今度は、私がMを導く。

「どう?なんかいつもより、濡れてないみたいなんだけど。大丈夫?」
気になることは、口に出して言ってしまったほうが、楽になる。
「うん、大丈夫。中はあったかいよ」

 私の疲れをいたわるように、Mがゆっくり動く。自分の体の一部が、帰ってきたような一体感。いつもおかえりなさいって感じで、受け入れてきた。

(中略)
今夜はこのまま、ゆるやかにつながったまま眠りたいような気もした。が。Mは少しだけ動きを早くして、静かに果てたようだった。しばらくして立ち上がったのは、コンドームを捨てにいったのだろう。

「のどかわいたよ!」
いろんなことがなんだか照れくさくて、子どもじみた大声で言った。Mがエビアンを持ってきてくれる。
「飲ませてくれえ」
 今日のあれこれを帳消しにしたくて、思い切り甘えた。Mの熱い唇から、対照的にひやっとした水が、私の喉に注がれる。母鳥から口うつしに餌をもらったヒナのように、安心して私は、休むことができた。
 

    眠りつつ髪をまさぐる指やさし夢のなかでも私を抱くの



俵万智さんはやはり歌人なんだなぁ・・とつくづく思ってしまう。いくら文章を並べても、短歌ひとつが蹴散らしてしまう。そして、31文字に凝縮される描写は、余韻を残す。

武道などでも日本人は「残身」「残心」といって、心を残すことを良しとした。
向き合った相手に心を残しつつ去る。執着まではいかない余韻を楽しむ心というのだろうか。その根源は相手を尊ぶことなのだ。
SEXもそうでありたいと思うのは、こじつけつけすぎ?(笑)

しかし、俳句とか短歌とか才能の有無が大きく影響しそう。

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